第1回MDIセミナーより、日産自動車 高橋直樹氏の講演録

高橋直樹さん:「会社を顧客志向にする!日産自動車の取り組み」抄録

第一回目のMDIでは、日産自動車のコーポレート市場情報統括本部のエキスパートリーダーである高橋直樹さんから、「会社を顧客志向にする!日産自動車の取り組み」というタイトルでお話をいただきました。当日のお話のアジェンダは、以下のとおりです。

  1. 事業概要:グローバルなビジネス展開
  2. 市場情報部門の組織と役割
  3. 車種開発をサポートする市場調査体系
  4. 市場調査部門の進化とコーポレート市場情報統括本部の目標
  5. まとめ:事業に消費者情報が活用されるための要件

最初に事業概要についてのご説明をいただき、次にご所属の部門や役割について、お話いただきました。高橋さんは、日産自動車の市場調査部門におられまして、ここは、お客様のニーズを汲み取ってプロセスに活かしていく市場調査の専門性をもつ部門です。会社を顧客志向にするために、お客様の情報を意思決定者や戦略を考える人たちに伝えている場所です。日本では55名ほどの体制で、調査だけでなく、トレンドの研究や分析、販売台数予測といったお客さま、マーケット全般に関わる役割をお持ちです。

この部門は、カルロス・ゴーンがリードして、従来社内には存在しなかった「お客さんの代表」として、どこの部門にも組みしない中立的な立場で客観的にお客様の声を集めて、信頼できるかたちで社内に浸透させるために、2002年に設置されました。この部門の役割は、①正しい情報を正しく収集・理解・客観的な分析・フィードバック。②発信した情報から導き出される提案内容の保証。③戦略構築におけるサポート。④企画提案における台数のバリデーション、⑤調査予算の管理だそうです。

3番目は車種開発をサポートする市場調査体系についてです。車種開発はステージゲート方式で、LineUp、Tageting、Concept Making、Model Development、Marketing、Pricingといったステップですすみ、市場調査は、このステージに合わせて情報提供を行なうそうです。

4つ目は市場調査部門の進化とコーポレート市場情報統括本部の目標です。市場調査部門の進化型には、①市場調査をして結果を報告する、②結果に基づいてレコメンデーションや提言する、③蓄積されたインサイトに基づいて事業領域に提言を行う、④将来の予兆に基づいて今会社がてがけていないことを提案するという4つの段階があると考えているそうです。2002年の創設から10年間は「マーケティングマインドのエバンジェリストになる」ことをビジョン・ミッションにして現在3段階目にさしかかっていて、現在は4段階目を目指し「カスタマーフォーサイトオーガニゼーションになろう」と活動なさっています。

最後にまとめとして、4つのポイントについてご指摘がありました。1つ目は、顧客志向に対して全社的にコミットしている必要があること。社内の全てのプランニングや意思決定において、お客様、消費者情報という判断基準の優先度合いが高くないといけないこと。これに関しては日産ではトップが繰り返しメッセージを発信したり、調査部門が自分が関与する領域を拡げて行く。2つ目は、データ志向、事実志向。役員の勘で決まるでは困る。3つ目としては、客観性が担保されていることと自社の戦略が反映されたやり方で調査が行われていること。4つ目として、消費者情報に基づいたプランニングや意思決定。やはり消費者情報というのがプロセスの中に組み込まれることが大事とのことでした。

とても面白い具体的なお話もいただきましたし、まだお聴きできていないこともたくさんありそうでした。とはいえ40分という短い時間で、極めて密度の濃い学びの多い時間をくださった高橋さまに、MDI企画メンバー一同、厚く御礼を申し上げたいと思います。
感謝をこめて。(文責:価値共創 伊藤武志)

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