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NTTグループに属する従業員数100名規模のマーケティング企画会社の社長として学習する組織の考え方に基づいた組織変革に取り組みました。その過程でのBSC導入経験から学んだことを以下にご紹介させていただきます。
最初にBSCを取り入れたのは2001年から2002年にかけてのことで、基本戦略策定プロセスの一環としてBSCの作成に取り組みました。このときは中堅社員を中心としたチームによりミッション、ビジョン、バリューの作成が行われ、ビジョンをもとにして同社の戦略をBSCで表現したわけです。しかし、BSCについての知識や経験が不足していたことや、十分な時間をかけられなかったこともあり、BSCについての議論は不十分で時間切れとなってしまいました。BSCを作成はしましたが、その後のフォローアップを行わなかったので、やがて意識されることもなくなってしまいました。
続いて2003年には年度の事業運営方針を作成するにあたり、前年度に作成したBSCを私が一人で作り直しました。何故一人でやったかというと、前年度にミッション、ビジョン、バリューの策定に取り組んだときには、多くの社員を巻き込んでかなりの時間をかけて実施したのですが、小さな会社で毎年それだけの時間と労力を社員に課するのは適切でないと判断したためでした。しかし、あまりにも多くの項目を入れすぎて「スパゲッティ状態」になってしまいました。また、社員を巻き込んで作成したものではなかったので、社長の頭の整理にはなりましたが、全社的に浸透するには至りませんでした。
3回目のチャレンジは2003年11月から翌年の3月にかけて行われました。この頃になると2001年から始めた学習する組織の導入戦略は次第に効果を出しつつありました。しかし、メンバーの交代などもあり、基本戦略を全社員で再度共有する必要があると感じていました。そのためにはできるだけ多くの社員を参加させてのBSCの作成が必要だと考えたわけです。
具体的には2004年度の事業計画をBSCの形式で作成することとし、そのことを11月の幹部会議で提案しました。また、企画担当の社員にBSCについて勉強し幹部会議および中堅管理者にレクチャーするようお願いしました。また、BSCを導入して成功をおさめている企業から講師をお招きして講演をお願いし、BSC導入の留意点などについて学びました。この段階になると、次年度の事業計画をBSCで作成しなければならないことと、BSCについての基礎知識も習得していたので、社員からの質問はかなり具体的で的確なものになっていたと記憶しています。
こうした準備を経て翌年の1月から3月にかけて経営幹部と部長クラスの10名が参加して、10回の打合せを行い、全社レベルでのBSCを作成しました。そして3月から4月にかけては、各事業部のBSCを作成しました。これが全社および各事業部の事業計画となったわけです。しかし、6月に私が社長を退任することになったので、残念ながらBSCのフォロー段階までを見届けることはできませんでした。
以上のような経験から私は次のようなことを学ばせていただきました。
(1)BSCは学習する組織を実現する上で、全社的に戦略を策定し共有するための有効かつ重要なコミュニケーション手段であると考えます。私たちの取り組みでは、BSCの作成過程で多くのシステム図が描かれましたが、このこと戦略の意図するところを共有するために役立ったと思います。
(2)BSCは一部のスタッフが作成するのではなく、できるだけ多くの社員が参加して議論しながら作り上げていくことが重要です。何といってもBSCは社内コミュニケーションのための重要な手段だということを忘れてはならないと思います。私が2回目の挑戦で犯した失敗はまさにこのことに起因するものでした。
(3)多くの人間が参画しての作成プロセスとなるために、会議のファシリテーションが重要です。導入作業を始める前に、BSC作成による事業戦略の共有の重要性について共通理解を得るためにワールドカフェなどの話合いの手法を活用することも有効でしょう。
(4)BSC導入にはかなりの時間とエネルギーが必要となるため、相当の覚悟をもって始めないとうまくいかないと実感しました。中小規模の会社の場合は、社長がBSC導入の意義と目的を十分に理解し、人任せにせず自ら先頭にたって、ディスカッションにも参加していくことが求められます。また、一度やると決めたら、しつこくやり続けることが大切だと思います。
(5)ただし、最初から100点満点のものを作ろうとしないで、5年くらいかけて良くするくらいの気持ちで取り組んだほうが良いと考えます。
(6)また、全社一斉導入にこだわる必要はなく、むしろ必要性を痛感している部署から導入したほうが効果を期待できるかもしれません。
(7)大切なことは、作りっぱなしにしないことです。私たちが取り組んだ初年度のように、BSCを作成したものの、作成しただけでその後は何の議論もしないというのでは、そもそもBSCを導入したことにはならなかったのだと反省しています。
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